HOME > 練馬北町の併用住宅 完成後の様子
練馬北町の併用住宅 竣工写真
設計のポイント
■コンテクスト
本計画は前面道路の拡幅工事にともない、親の代から受け継ぐ蕎麦屋とその家族の住宅に新たに賃貸住宅の用途を加えた併用住宅の建て替です。
敷地は、阿波踊りで賑わう商店街と国道を結ぶ道路に面し、公園へ繋がる小道が突き当たるT字路に位置しています。ここは駅や商店街、そして公園へ行き来する人々が交差する場所です。
■複合的な建物用途
建物の用途は、施主が営む蕎麦屋、その住宅、そして賃貸住宅の複合用途となります。
賃貸住宅の家賃収入によって建設費の負担を軽くする計画、。
路面の1階を蕎麦屋とし、今までの習慣から蕎麦屋の厨房は住宅のキッチンを兼ねるため、アクセスの良い2階に家族の住宅を配置しました。3階には一部家族の部屋をとり、残りを賃貸住宅にあてています。賃貸住宅の部分は、将来的に家族の部屋として拡張可能なことを想定し計画しています。
■立体交差する平面構成
複数の用途を立体的に交差させながら積層する計画です。
各々の用途で求められる軸線を交差させて積層させることで、層を追うごとに視界の変化と周囲との関係性に変化が生まれます。そこでは単に積層させることでは生まれない新たな機能が発生します。
用途の異なる各層はランプ(ramp)と呼ばれる階段によって結ばれ内と外の活動が円滑に展開されます。
また、用途の立体的な交差を視覚化することで、そこで営まれている活動を周囲に発信しています。
1階のそば屋は、前面道路に直交する東西軸で配置され、サービススペース、厨房、客席、上り座席をそれぞれ平行に並べています。それによって、道路に面する西側からは、それぞれの場所に常に一定の光を行き渡らせることができます。
客席は、東西の両方向に大きな窓を設けることで、外部からの光と風を取り込んでいます。西側からはショーウインドウ越しに、障子によって濾過された柔らかな西日が入ってきます。東側は、窓先に裏庭を設えることで外部との一体感を演出し、実際の空間以上に奥行きを感じられるようになっています。光の移ろいや風の流れ、視線の抜けといった要素によって、おおらかな空気感を持った居心地の良い客席となっています。
上り座敷は、西側の道路に面し、格子に囲われた坪庭を設えています。格子は、住宅街である周辺の風景に対して開き過ぎないほど良いフィルターとなって坪庭の風景を室内へ取り込めるようになっています。
2階の住宅は、前面道路に平行な南北の軸に各室を並べ、中央に細長いリビングダイニングを配置することで、家族は常にこの場所を介してそれぞれの部屋へと行き来します。お互いの距離感を尊重しつつも、家族同士をつなぐ場所となっています。
3階の南側には施主の部屋があります。東西に軸線のある細長い部屋は、三方位に面した窓から光の移ろいと風の流れが感じられる豊かな環境となっています。
3階の賃貸住宅は、道路に面して東西に長い「へ」の字に折れ曲がった住戸が並べられています。
「へ」の字に平面を折ることにより玄関から内部が容易に見通せない奥行き感のあるワンルーム空間となっています。ベランダの開口部には袖壁をつけ、その上にトップライトを設けました。トップライトからの光が袖壁に当たり室内へ光を導きいれるように工夫しています。ベランダは、西側の光だけでなく東側、南側の光で終日満たされます。
■周辺環境を取り込む余白のある配置計画
建物の配置は、公園から延びる小道の視線が敷地へ込むよう、敷地に余白(空き)をつくる計画としています。また建物の平面をひし形とすることで、パースペクティブな奥行きのる余白(空き)をつくり出しています。
■遠景と近景を考慮した外観
外観は、建物全体が蕎麦屋の「顔」となるようなデザインを目指しました。
商店街や公園などからの遠景や道路を通る人々からの近景を考慮し、外観のデザインを決めています。全体としては住宅や賃貸部分の生活感が建物の表情に現れないよう配慮し、1階のお蕎麦屋さんの部分は、杉板コンクリート打ち放しの肌あい、枠取られたショーケース、細い縦格子のスクリーンや植栽、足元に見える坪庭など、そこを通る人々が建物を身近に感じ取れる仕掛けを多く取入れました。
遠景からは用途が不明な大きな結晶のような塊として見え、徐々に建物に近づいていくにつれて、身体的なスケールでつくられた蕎麦屋の印象的に目に飛び込んできます。